第7回日本眼科AI学会総会
髙橋 秀徳
(筑波大学医学医療系 サイバーメディスン研究センター 教授)
第7回日本眼科AI学会学術総会を2026年10月1日にグランシップ静岡にて開催の運びとなりましたことを心より感謝申し上げます。本学会は、眼科医療におけるAI・ビッグデータ・遠隔医療活用の最新動向を共有し、より良い医療連携を築くための場として2019年に発足し、今回で第7回を迎えることになりました。これもひとえに会員各位、関連学会、企業・行政関係者の皆様のご支援の賜物であり、ここに厚く御礼申し上げます。
私が眼科領域におけるAI研究に携わり始めたのは2015年、ちょうどAIの画像識別精度がヒトを上回ったと報告された年でした。当時、米国の眼科学会総会においてもAI関連の演題はほとんど見られず、ポスター数枚が掲示されるにとどまり、AI自体への認知がほとんど得られていない状況でした。私はそのような中で今日のようなAI発展を確信し、協力してくださる研究者が現れるまでにはAIの有用性が一般に知れ渡るまでの数年を要しましたが、大学に蓄積された大量の眼底写真を当時のまだ不安定なAIプログラムに学習させる試みを地道に重ねてまいりました。その成果は翌年の特許出願や大学発ベンチャー設立につながり、さらにはAI技術を活用した医療機器プログラムの認証取得など、社会実装への歩みへと発展してまいりました。
この数年、眼科領域では画像診断・治療計画・遠隔医療など多方面でAI技術の導入が急速に進み、臨床現場の業務負担軽減や診断精度向上に寄与する成果が次々と報告されています。特に生成AIや深層学習など新しいアルゴリズムが身近になり、診療・研究・教育のあり方そのものを変えつつあります。本学会のテーマである「AIと眼科医の協働、生成AI時代の新しい医療連携」は、まさにこの転換期を象徴するものです。
今回は第一線で活躍される先生方をお招きし、診断支援、画像解析、患者アウトカム予測など多岐にわたる最新の研究成果や実装例が紹介されます。また、従来から医療現場に存在してきた各種解析プログラムがAIによって進化し、より実用的で信頼性の高いツールとして利用可能となりつつあります。近年、日本でも医療機関で実際に使えるAI医療機器プログラムが市場に登場し始め、眼科医療のパラダイムを変える可能性が広がってきました。本総会が、そのような新しい動きを冷静に評価し、安心・安全な形で臨床に取り入れるための議論の場となれば幸いです。
学術集会のもう一つの大きな目的は、領域や世代を越えたネットワークの構築です。AIの研究開発には、工学、情報科学、倫理・法制度など多様な専門家の協働が欠かせません。本総会での議論や交流が、新たな共同研究や臨床応用への橋渡しとなり、ひいては患者さんにとってより良い医療につながることを心より期待しております。
結びに、本学会の開催にあたりご尽力いただいた関係各位に深く感謝申し上げますとともに、静岡の地にて皆様にお目に掛かれることを心待ちにしております。
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